島 あゆみ(テキスタイルデザイナー)
初めて出会ったのはいつだったか?
10年くらい前になるのかもしれません。
島さんの印象は?と聞かれたら、もの静かで、あまり自分のことを主張しない人。そんな印象でした。
なので知り合ってしばらくの間は、アーティストさんだということは知らなかったのです。ご自分から話をしてくる人ではなかったからです。
いつも誰かと一緒に居ながら、なんだか自分の存在を消している様でした。笑
しかしあるきっかけで一緒にお食事をする機会があり、初めて島さんという人間を知ることになりました。
島さんのことを知っていくとコツコツ、もくもくと作業をしているアーティスト、そんな感じの人です。
作品を見ると日本のしぼりを感じてしまいます。
自然な色の動きをアートにした優しくもあり、柔らかくもあり、二つとない動きと曖昧さが、唯一無二のアートを作り出しているのだろうと感じています。
そんな島さんに、テキスタイルデザイナーになったきっかけや作品が生まれる過程、これからのことなどインタビューしてみました。
テキスタイルデザイナーになられたきっかけは何ですか?
ーー昔から絵を描くことが好き、インテリアが好き、布が好きでそのままテキスタイルデザイナーの道に進みました。
現在はアートとテキスタイルを融合したものつくりをしています。
あなたの経歴を教えてください
ーー美大卒業後、インテリアファブリックメーカーに入社。
その後デザイン画を描きたくてテキスタイルデザインスタジオに転職。その後、独立。
国内海外の展示会や展覧会など多数出展。
オリジナルデザイン制作、建築、インテリアでのアートワークなどで活動。
今までで一番、影響を受けた人は誰ですか?どのように影響を受けましたか?
ーー人生のほとんどを病気で過ごした私の母です。
心の病気だった母は、口数は少なくいつも美しいものを眺めていました。私の勝手な見方ですが、心のバランスをとるために自然の美しいものを求めていたのかもしれません。
自分の美意識をしっかり持っていた人でした。
私自身もそんな母の影響で、日頃から自然の美しいものを無意識に探して心を落ち着かせているのかもしれません。
そんなところから作品が繋がっていると思います。
今までで一番、思い出のある作品は何ですか?なぜですか?
ーー独立した時に、自由にデザインしたものをブランド化できる機会をいただきました。
その時の『KARAKORO』というデザインです。
色付けした和紙や織物のテクスチャーなどをミックスしてつくったデザインです。
10年以上経ってから久しぶりに目にし懐かしさと共に、やっぱり好きと思えた私の原点となるデザインです。
量産のためにデザインしていた若い頃、納期に追われコストにしばられ割り切って仕事をこなしていた頃と自分の仕事意識の違いを感じました。
一番大切なことは、まず自分が好きということ。
ここから私のモノ作りのテーマ『スキノハテマデ』がはじまりました。
作品作りでこだわっていること、心掛けていることは何ですか?
ーー邪魔にならないものをつくっていたいです。
自分が好きなモノにウソをつかないことです。
あたりまえの事かもしれませんが、まず自分が好きかどうかは一番大切なことだと思っています。
一つ一つ丁寧にどんな仕事にも、手作業の部分を大事にしたいと考えています。
作品はどのように生まれますか?
ーー自然からのインスピレーションから生まれます。
昔から散歩するのが好きで、山や川に行くと綺麗な色の石や面白い形の葉や木の実などを集めて遊んでました。今も変わらずポケットをいっぱいにして帰ることが多いです。
幼い頃から集中するのに時間がかかる子でした。
今でも雑音の中では何も生まれないのは変わっていません。
景色を邪魔するものが目の前にあると気持ちが落ち着かなかったり、心が乱れていると何度もやり直したり、ひどい時は丸一日全く手をつけられないこともあります。
でも何か研ぎ澄まされた時は、スルッと気持ちが入りそこからは時間を忘れています。
迷いながら一本の糸を探しているような感覚の中で、作品づくりも私自身も生きているのかもしれません笑
作品が作られていく過程を教えてください。
ーー自分の感動した色、テクスチャーの記憶から描いていくパターンと描いていく上で自分の記憶に出会って、見えてくるものに向かってその世界を表現していくパターンがあります。
素材は布以外にも紙や金属も使ったりします。
その素材でいかに気持ちの良い色やテクスチャーを表現していくかということを考えてもの作りしています。
時にはデジタル機能を使って表現することもあります。手描きからデジタルプリントしたり金属をデジタル加工したりもします。また全工程が手作業のみで行うこともあります。
これから挑戦したいことはありますか?
ーー約30年、テキスタイルデザイナーとしてファブリックだけではなく、さまざまな素材に表現するために絵を描いてきました。
まだまだ、いろいろな素材でも他の業界の方ともジャンル超えて挑戦して行きたいです。
ーーすべてのことを愉しむことです。
側にある美しいものに対して、いつも見逃さないように敏感でいたいです。
自然の中に溶け込むように、暮らしの中に溶け込むようなテキスタイルアートを提案していきたいです。
すべては好きから生まれるもの。
暮らしの中に喜びと愉しみが感じられますように…