dotto・CANDLE(キャンドル作家)
素材と製法にこだわって、ひとつひとつ手作りでキャンドルを作られているdotto・CANDLE(ドットトゥ・キャンドル)
キャンドルを焚き、耳を澄ましてみるとプツプツ ジジジとまるで小さな焚き火のような音が聞こえ、心が癒されます。
キャンドルはビンに詰められ、和紙のラベルが貼られていて、シンプルなのにどこか洗礼された雰囲気が伝わってきます。
香りは自然からインスピレーションを受けて作られていて、家にいながら自然の中にいるような気持ちにさせてくれる優しく寄り添ってくれる匂いです。
キャンドルを焚き、何もせずただゆっくりとすぎる時間を味わうことの素晴らしさを教えてもらえた気がします。
dotto・CANDLEを始められたきっかけは何ですか?
ーー仕事を辞めて大阪から北海道・小樽に移住した当初、何をするか全く分からない状態でした。とにかく何をするにも体と心を元気にしてから、と思い焦らずにスローな生活を心がけました。
荒れた庭を耕し土に触れ野菜を育てたり、北海道の大自然の美しさを目の当たりにする生活は少しずつ私たちに力を与えてくれました。
すりへってしまう毎日に自然のリズムで寄り添う何かを作りたい。
ローカルに少しずつ。
そんな想いから天然素材ハンドメイドのdotto・CANDLEが始まりました。
あなたの経歴を教えてください
ーー富山県出身&東京都出身
共に東京や大阪での会社勤務を経て退職。
自分たちの中の”漠然とした違和感”と向き合い、北海道での暮らしを決意して小樽へ移住しました。
”違和感”を感じながらも実際に行動に移すことは簡単なことではないと思うのですが、実際に決断し行動できた大きな理由は何ですか?
ーー何でしょうか?タイミングでしょうか?
前から抱いていた北海道で暮らしてみたいという想いと、社会の構造、その中でどう生きていくかという違和感が最大限だったのかもしれません。
ストレスを溜め込みながら労働力を提供しお給料をもらう、ストレス解消のためにお金を使う、はたまた病院に行く、そのためにもお金が必要、という多くの人が受け入れている社会のサイクルが最善なのかは分かりません。
決断に至るまではたくさんの時間がかかりましたが、「人生は実験。何かしていくうちに形になっていくものもあるだろう」と考え行動しています。
『dotto・CANDLE(ドットトゥ・キャンドル)』の「ドットトゥ」には、
そんな私たちの取るに足らないひとつの点から、という意味を込めています。
今までで一番、思い出のある作品は何ですか?
ーー初期に取り組んだHanaの香りのキャンドルです。
木芯は燃えつづけないし、精油の香りも熱で飛んでしまうし、散々です。
でも今では一番人気の香りですし、皆さんの香りを嗅いだ瞬間の顔を見るととても嬉しくなります。
作品作りでこだわっていること、心がけている事は何ですか?
ーーほんとうに人を癒すのは、
「自然のもの」「人から生まれるあたたかさ」「それに包まれる時間」だと私たちは信じています。
天然の素材でゆっくりと丁寧に作るというのはもちろんですが、小樽から旅立つひとつひとつにすりへってしまう毎日を送る誰かのところへ(それはかつての自分たちへのようでもあるのですが)
そんな自然の時間が届くようにと想いを込めてお作りし、送り出しています。
作品はどのように生まれますか?
ーー私たちは旅が好きです。
いろいろな場所で、そのタイミングでしか出会えないものには非日常を感じると同時に日常のありがたみ、時間や存在の不思議を感じます。
北海道の自然の圧倒的な美しさや力強さからインスピレーションを受けています。
作品が作られていく過程を教えてください
ーーおおまかに5つの工程があります。
①木芯作り:
生木に火をつけても燃え続けません。
dotto・CANDLEは天然木を時間をかけ独自製法で木芯にしています。
②座金作り:
オリジナルの木芯を支えるのもオリジナルの台座。ワイヤーとペンチでひとつひとつ手作りしています。
③精油の調合:
心動いた自然や旅や出会いから香りの世界観をまとめ精油の構成を組み立てます。
時にはその場所の環境や植生、歴史文化といった事も調べていきます。
それぞれの精油の特徴や効能、精油をブレンドした時の香りとキャンドルに入れた時の香りの変化、熱に弱い香りをどう炎と共に引き立てるか、ブレンドレシピができあがるまでは多くの難問があります。
④キャンドル作り:
100%のソイ(大豆)ワックスを溶かし、調合した精油と一緒に静かに容器に注いでいきます。琥珀色の液体が固まるにつれてだんだんと白色に変化していく様は、雪が積もってゆく美しさに似ています。
⑤ラベルパッケージング:
全て自分たちの手で行っています。ラベルやパッケージにいたるまで、シンプルな中にひとつひとつ意味(メッセージ)を込めています。
余談ですが、Mサイズのチャームとしている”小さな松ぼっくり”は、北海道の森を感じてもらおう、と冬の間スノーシューを履いて小樽の森で採取し綺麗にしたものをおつけしています。
これから挑戦したいことは何ですか?
ーー作品を通じて色々な情景や自然の時間、自分だけの時間を持つことの心地よさを感じていただけたらと思っています。
また、私たちが住むノスタルジックな街、小樽には取り残された古いものがあります。それらと自然のサイクルに合った人にも環境にも穏やかな暮らしを結びつけていけないかと考えています。
これからの自分自身に期待することは何ですか?
ーーグローバル化やAI化・効率化で疲幣感のあるところへ新型コロナウイルス感染が拡大し、私たちの日常も心も価値観もより混沌としてきました。
と同時に、歴史を振り返ると同じようなことが形を変えて起こっているだけとみることもできます。
冷静に、柔軟性とバランス感覚を持って日々と向き合っていきたいと思います。
あなたにとってキャンドルとは?
ーー酸素をとりこんで燃焼し水蒸気を生みだすロウソクの現象は、人の呼吸と同じであるとイギリスの科学者ファラデーは世界的名著『ロウソクの科学』で述べています。
その呼吸で生じた二酸化炭素を植物が取り込み再び酸素へと循環していきます。
科学や自然、人や哲学、多くのつながりをロウソクに見ることができます。
ひとつのビンに入ったロウと木芯。
それは呼吸する私たちの命の時間のようでもあります。
たび重なる偶然で組み合わされた自然物が
どのように、どれくらい燃えていくのか
手を入れるのか、放って置くのか
燃焼時間の目安はあってもひとつひとつが違います。
私たちにとってキャンドルとは生きることそのものを問いかけてくる存在です。