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Vol.5 ミッドセンチュリーモダンスタイルにタイムスリップ!?

絵:エンドウシノブ 

作:YU

ゆうこさんはじゅんさんと結婚して3年目。

かわいいフレンチブルドッグのふうちゃんと一緒にマンションに住んでいます。

ついに念願のマイホームを建てることになったゆうこさん。毎日どんなおうちにするか考えて、そのことで頭がいっぱいです。

 

ゆうこさんは、マンションのベランダでお野菜を育てています。

今日は美味しそうに育った野菜をお母さんに届けに、ふうちゃんと実家に遊びに行く予定です。

新しいおうちでは、広いお庭でお野菜をたくさん育てることが、ゆうこさんの密かな夢なのです。

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実家は、ゆうこさんが住んでいるところから歩いていける距離にあります。

 

「ふうちゃん、今日はママのおうちに遊びに行くわよー」

ふうちゃんは、ゆうこさんのお母さんが大好きです。大喜びで実家に向かいます。

 

カチン!

 

向かっている途中で、お母さんからメールが届きました。

 

”ゆうこちゃんごめんね!歯医者さんを予約していたのを忘れてたー!すぐ帰るからおうちで待っててね〜♡”

 

「ママ、また予定を忘れていたんだって!ふうちゃんおうちで待っていようね」

ゆうこさんのお母さんは、ちょっぴりおっちょこちょい。よくあることなのです。

実家に到着したゆうこさんとふうちゃん。

実家のおうちは、おじいさんとくみおばあさんが、ゆうこさんのお母さんが小さい頃に建てたおうちです。

ゆうこさんもこのおうちで育ちました。

今はゆうこさんのお父さんとお母さんが2人で住んでいます。

 

このおうちには、今でも少しくみおばあさんの持ち物が残っているのです。

くみおばあさんとは、ゆうこさんのおばあさんです。生前インテリアデザイナーだったのです。

マイホームを建てることになって、いろいろ悩んでいるゆうこさんの前に不思議と現れて、インテリアのいろいろなことを教えてくれるのです。

 

ゆうこさんは懐かしくなって、くみおばあさんが仕事場所として使っていたお部屋に入りました。

すると変わった形のミラーと時計が目に入りました。

 

「今まであまり気にしていなかったけど、こんなにすてきなミラーと時計があったのね。レトロでなんだかかわいい!」

ゆうこさんは、くみおばあさんにインテリアのことを教えてもらうようになって、いろいろなモノに興味を持ち始めていました。

気になって時計を手に取ろうとした瞬間、なんと突然時計が逆回りし始めたのです。

 

「うわぁ〜!目がまわる〜!!!」

 

グルグル グルグル

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ゆうこさんとふうちゃんは、目が回り床に倒れてしまいました。

少しの時間、眠っていたような気がしたゆうこさんとふうちゃん。

 

「ふうちゃん大丈夫?今のは何だったのかしら?」

立ち上がって、あたりを見回したゆうこさん。時計の針は今の時刻を示し、普通に動いています。

しかし、お部屋の端に見覚えのないドアが現れたことに気がつきました。

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「あれ?こんなドアあったかしら?ふうちゃん、開けてみようか?」

不思議に思ったゆうこさんは、ドアを開けることにしました。

 

トントン ガチャ

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するとそこは、時代がタイムスリップしたようなお部屋が広がっていました。

壁はウッドパネルで、オレンジ、イエローのイスやソファ、ローテーブルにグリーンのラグ、照明が置かれています。まるでレトロの世界にいるようです。

そしてそこには、空間にぴったりな格好をしたくみおばあさんが座っていたのです。

 

「ゆうこちゃーん!いらっしゃい!びっくりしたでしょ?実はここは1950年代のアメリカなの。私にとってはとても懐かしい空間よね!今日はこの時代、アメリカで人気のミッドセンチュリーモダンのインテリアスタイルについて紹介していくわよ!」

何事もなかったかのように、くみおばあさんは説明をし始めました。

 

「く、くみおばあちゃん!ミ、ミッドセンチュリーモダン!?初めて聞いたわ!どんなスタイルなのかしら?楽しみー!」

不思議に思ったゆうこさんでしたが、新しいインテリアスタイルについて学べることが楽しみで、そんなことは気になりませんでした。

 

「第二次世界大戦後、アメリカでは住宅ブームが起きたの。それによって家具の需要が高まり、軍用技術を生かしてデザイン性の高い、さまざまな家具が生まれたのよ。その時代に生まれたインテリアスタイルをミッドセンチュリーモダンというの。」

 

「そういう背景がインテリアスタイルを生み出しているのね」

 

「そうなの!ではそのミッドセンチュリーモダンスタイルの作り方を説明するわよ!ゆうこちゃん!ふうちゃん!こっちについてきてー」

くみおばあさんは、ゆうこさんの手を取り、隣のお部屋に移動します。

「まずはもちろん!この子たちを呼ばなくちゃね!」

 

パチン!

 

そう言って指を鳴らしたくみおばあさん。するとお部屋の端にある小さなドアから、小さなおじさんアダムくんが登場しました。

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「最初は壁と床、天井を作っていきましょう!このスタイルはウッドパネルを使うといいわね。他にも石やレンガを使うとミッドセンチュリーモダンらしさが出るわよ!基本カラーとしては、大地や植物を表したアースカラーを使うのがおすすめよ。」

 

「なるほど!自然物を表した色をアースカラーっていうのね」

 

「その中に少しインパクトのある、幾何学模様の壁紙をポイントとして取り入れるのもいいわよ!今回は天井をウッドパネル。壁には少し薄めのグレー、床はタイルにしましょう。ポイントとして、キッチンの壁だけ違う壁紙を貼りましょう。アダムくん!作業開始よ!」

そう言われたアダムくんたちは、材料を運んできて、それぞれ仕事を始めます。

アダムくんたちによって、みるみると変わっていくお部屋を見て、ゆうこさんはワクワクしています。

 

「うんうん。いい感じね!では次はアイテムを紹介するわね。最初に説明したように、この時代は様々なデザイン性の高い家具が生まれたの。家具デザインの黄金期と言われているのよ。」

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「彼らはこの時代、アメリカで活躍した伝説的なデザイナーで、まさにミッドセンチュリーモダンを代表するデザイナーたちよ。彼らが座っているイスは、自身がデザインしたもの。ミッドセンチュリーモダンの空間を作るには、このようなデザイナーズ家具やアクセサリーを1つでも取り入れると、らしさがとても強まるわよ。」

 

「そうなのね!デザイナーズ家具って取り入れるの難しそう!」

 

「そうね。例えば代表的なイームズラウンドチェア。ゆったりとリビングで本を読む人が取り入れるといいわね。自分の暮らしを考えながら必要な家具を選ぶといいわね。ミッドセンチュリーモダンの家具は、シンプルで無駄な装飾がないものが多いので、とても合わせやすいわよ。だから自分にとって必要な機能を考えて選ぶと良いわよ。」

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「あと基本のアースカラーに偏ってしまうと、全体が地味になってしまうので、ソファやイス、アクセサリーにはオレンジや赤、黄色や青のような鮮やかでポップな色をアクセントに入れると良いわね。カーテンはレトロな柄のものを選ぶのも良いけど、ウッドブラインドがよく合うわね。アートは、ポップアートのようなインパクトのあるものがお似合いよ。アンディ・ウォーホルのポスターなど、とっても映えるわね。」 

「私、鮮やかなポップな色大好き!」

 

「ゆうこちゃん。自分の好きなモノがわかってきたんじゃない?こうやって色々なモノ・コトに触れて、経験や体験することでゆうこちゃんの視野が広がってきているのよ。」

ゆうこさんは自分では気がついていませんでした。今まではフワッと曖昧だったものが、くみおばあさんにインテリアのことを教えてもらい、たくさんのモノを見ることで、自分の好きなものが明確になってきたのです。

 

「人生の中で、"正しいコトと間違っているコト"を学ぶことも、もちろん大切だけど、"自分が好きか嫌いか"という感性を養っていくことも、とても大切なことよ。何事も簡単に決めつけるのではなく、たくさんのコトにチャレンジして経験してみるの。」

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そう話してくれたくみおばあさんは、最後に照明を飾ってお部屋を完成させました。

ミッドセンチュリーモダンにぴったりの北欧のルイスポールセンのデザインは、シンプルでありながら美しいデザインの照明です。

 

「ゆうこちゃん出来上がったわ!今回のインテリアスタイルはどうかしら?ベースはシンプルに作りながら、ポイントにポップさを加える。その時代の技術革新、斬新さがインテリアに表現されているのよね。ミッドセンチュリーモダンスタイルは、未来への発展を感じるインテリアと言えるのかもしれないわね。さぁゆうこちゃん!次のドアを自分で開けてみてー!」

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ガチャ! バン!

ドアを開けると、くみおばあさんの仕事部屋に戻っていました。あたりを見回しても何も変わりはありません。ドアもなくなっていました。

不思議に思っていると、ゆうこさんのお母さんの声が聞こえてきました。

 

「ゆうこちゃんごめんね〜!まぁ美味しそうな野菜じゃない!今日はパパが出張で帰ってこないから、一緒に晩ご飯を食べましょう!じゅんさんにも連絡しておいたからね〜。」

 

ゆうこさんはお母さんと一緒に晩ご飯の支度を始めました。

じゅんさんも揃い、今日は3人での食事です。

ゆうこさんは、くみおばあさんとの出来事を、今日はお母さんとじゅんさんに聞いてもらいました。

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「くみおばあちゃんは、とっても愛情の深い人だったから、きっとゆうこちゃんのことが心配でたまらなかったのね!いつも見守っていてくれて、導いてくれているのよ。感謝しなくちゃね!」

ゆうこさんのお母さんはそう言って微笑んでくれました。

 

ゆうこさんはくみおばあさんにいつも守られていることに、改めて気が付いた1日でした。

 

 

おしまい

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