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Vol.4 スカンジナビアンスタイルにタイムスリップ!?

絵:エンドウシノブ 

作:YU

ゆうこさんは、じゅんさんと結婚して3年目。

かわいいフレンチブルドッグのふうちゃんと一緒にマンションに住んでいます。

 ついに念願のマイホームを建てることになったゆうこさん。毎日どんなおうちにするか考えて、そのことで頭がいっぱいです。

 

季節は冬になり、毎日寒い日が続いています。

ふうちゃんは寒さが苦手です。今日もストーブの前を独占しています。

 

「あはは。ふうちゃんはまたストーブの前から動かないね!じゃあ僕は仕事に行ってくるよ!」

じゅんさんはふうちゃんの姿を見て、微笑みながら今日もお仕事に出かけます。

 

 

「いってらっしゃーい!」

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じゅんさんを見送ったゆうこさんは、気持ちよさそうにくつろぐふうちゃんに、声をかけます。

 

「ふうちゃん!今日はね、じゅんさんのために編むセーターの毛糸を買いに行きたいの♫」

ゆうこさんは、ふうちゃんに手作りのニットのお洋服を着せて、お買い物に出かけます。

今日はいつもと違うお散歩コースを歩いているので、ふうちゃんは周りをキョロキョロ。とても楽しそうです。

少し歩いていると、ゆうこさんは見たことのない新しいお店を見つけました。

白くて丸い可愛いお店は、なにやらキャンドルのお店のようです。

外から中をのぞいてみると、ビンに入ったキャンドル、お花柄のキャンドル、とっても大きなキャンドル。様々なキャンドルが置いてあります。

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「わぁ!たくさんのキャンドルが置いてあるわ!ふうちゃん、ちょっと寄って行きましょう!」

ゆうこさんたちは、お店の中に入ることにしました。

 

コン コン コン

「お邪魔しまーす。」

ゆうこさんとふうちゃんは、そっとお店の中に入っていきました。すると外から見ていた風景と全く違う場所にいることに驚きました。

周りを見渡せば、誰かのおうちのようです。壁は白くすっきりとしています。

お部屋の中には、さんさんと太陽の光が入り、白い壁に光が当たりさらにお部屋を広く感じさせてくれます。

なんだか日本とは違う空間にいるようです。

 

「あれれ〜!間違っちゃったのかな?どうしよう〜」

慌てておうちを出ようとしたゆうこさんとふうちゃん。すると聞き覚えのある声で呼び止められました。

 

「ゆうこちゃーん!ふうちゃーん!」

振り返ってみると、おしゃれメガネをかけたおばあさんが、大きな笑顔でゆうこさんに手を振っています。

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「くみおばあちゃん!!」

そうです。ゆうこさんが小さい時になくなったゆうこさんのおばあさん、インテリアデザイナーのくみおばあさんだったのです。

ゆうこさんがおうちを建てることになり、悩んでいると、こうして時々ゆうこさんの前に不思議と現れるようになったのです。

 

「ゆうこちゃん、ここはどこだと思う?」

 

「えーっと、私はキャンドルのお店に入ったはずだけど・・・どこかしら?全然想像がつかないわ。スッキリ、シンプルで素敵なお部屋ね。」

 

「実は私たちはデンマークのおうちにいるのよ。デンマークのインテリアをスカンジナビアンスタイルというのよ!今日はこのスカンジナビアンスタイルについてゆうこちゃんに紹介するわね!」

パチン!

 

くみおばあさんが指を鳴らすと、目の前に大きな地図が現れました。

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「スカンジナビアンスタイルとは、ここデンマークも含めたスウェーデン、ノルウェーの3カ国のことを言うのよ。そしてさらにフィンランドとアイスランドの2カ国を加えると北欧スタイルと言われるの。ここ北欧では冬の時間が長く、おうちで過ごす時間が多いの。」

 

「へぇー!そうなんだ!」

 

「そう!日照時間がとっても短いのよ。だから快適におうち時間を過ごす工夫がされているの。この国の人たちは、幸せだと感じている人がとても多いと言われているのよ。」

くみおばあさんは大きな地図を、大きな指差し棒でさしながら、北欧の暮らしについて教えてくれます。

 

「さあ次はこっちのお部屋に行きましょう!」

くみおばあさんが隣のお部屋のドアを開けて、ゆうこさんはびっくりしました!

いつもおうちを変身させるアダムくんたちが、暖炉のあるお部屋でキャンドルを焚いて、食事を楽しんでいたのです。

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「あれれ〜!アダムくん!今日はまだ呼ばれていないのに、ここで何をしているの〜?」

 くみおばあさんは笑いながら、状況を説明してくれます。

 

「あはは!アダムくんたちは今ヒュッゲの時間を楽しんでいるのよ」

 

「ヒュッゲ?」

ゆうこさんは初めて聞く言葉でした。

 

「そう!ヒュッゲとは、デンマークの人々がとても大切にしていることなの。彼らのライフスタイルを表す言葉なのよ。”ほっとくつろげる心地よい時間を過ごす” ”おうちの中を整え、心地よく、くつろげる空間にする” そういった考えを表す言葉なのよ」

 

「そうなのね!なんだかみんな楽しそう!」

楽しそうに過ごすアダムくんたちをみて、ゆうこさんは思わずほっこり。ふうちゃんも思わずほっこり。

くみおばあさんは話を続けます。

 

「光を取り入れる方法として、照明を使わずにキャンドルにしたり、間接照明にすることで明るさと影ができ、とても柔らかく穏やかな空間が演出できるのよ。大切な家族や仲間と、何気ない時間を一緒に過ごすことを、とても大切にして、素敵な時間を過ごしているのよ。特別なことではなく、日々のちょっとした幸せに目を向け、意識することで、何気ない幸せを感じることができるのかもしれないわね」

ゆうこさんは、くみおばあさんの話を聞いてヒュッゲにとても興味が湧きました。

 

「私もそんな空間を作りたい!どうしたら私もそんな空間で過ごすことができるのかしら?」

くみおばあさんは大きな笑顔を見せ、指をならします。

 

パチン!

 

「アダムくん!準備はいい〜?」

隣のお部屋に移動したくみおばあさんとゆうこさんとふうちゃん。

スカンジナビアンスタイルの空間を作り出すため、アダムくんは白い漆喰、自然の白木の床を運んできます。

 

ヨイショ ヨイショ ヨイショ

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「スカンジナビアンスタイルを作り出すには、自然の光を最大限に取り込める、白をベースカラーにするといいわよ。長い冬の暗闇の影響から、太陽の光への尊敬がインテリアにも表れているのよ」

 

「コースタルスタイルの時にも教えてもらったことね!白にすると光が拡散されて、とても明るい空間になったよね」

 

「その通りよ、ゆうこちゃん!そしてデンマークのすぐ近くスウェーデンでは”ラーゴム”という言葉があるの。多すぎず、少なすぎず、ちょうどいい。余計なモノを持たず、必要なモノを必要な分だけ持つ。それを長い期間に渡って大切に使う。そういう考えを持っているのよ」

ゆうこさんは知らないことばっかりで、学ぶことがいっぱい!くみおばあさんとの時間は、ゆうこさんにとって新しいことを学ぶ、ワクワクする時間なのです。

 

「スカンジナビアンスタイルは、そんな考えからお部屋には余計なモノがなく、スッキリとした空間が特徴の1つなの。モノが見えないように扉付き収納を使ったり、空間をスッキリさせましょう」

 

「なるほど!隠す収納ね!」

 

「ゆうこちゃん!次はスカンジナビアンスタイルを作るためのアイテムを紹介するわよ!」

「スカンジナビアンスタイルは、家具や照明はシンプルで、無駄な装飾のないラインが大切よ。もちろん、座り心地も大切にしましょうね」

 ゆうこさんの目の前には、黄色いソファ、柔らかなフォルムでありながらスッキリと機能的なイス、そして光を形づくる、とてもシンプルな照明が並んでいます。

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そしてさらにくみおばあさんの話は続きます。

 

「自然を感じられるモノを取り入れることで、さらにスカンジナビアンスタイルを表現することができるのよ。棚の木製のモノにしたり、壁やカーテン、クッションを、自然を感じる植物柄にするのも1つの方法よ。あとは温かな質感のある手編みのブランケットやクッションを置くのもいいわね」

 

「なるほど!おうちの中にいながら自然を感じられるようにするのね」

 ゆうこさんはアイテムを見て、どのように空間が出来上がるのか、想像して楽しみになってきました。

くみおばあさんは突然、ゆうこさんに昔の話をし始めました。

 

「ゆうこちゃん覚えてるかしら?あなたが2、3歳の頃だったかしら?私と一緒にミュージカルを観に行ったこと」

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「もちろん!覚えているわ!ママがよく話してくれたの。私がミュージカルを観て帰ってきた時、内容を細かく覚えていて、楽しそうに話していたのよって。私はそれから音楽、舞台が大好きになったのだと思うわ」

 実はゆうこさん。音楽が大好きで、小さい頃からピアノを演奏しています。おうちの中でも、いつも音楽を聞いているのです。

 

「実はね、おうちの中には自分が惹かれるモノたちが集まっているのよ。それは時に根拠もなく心が惹かれている場合もあるの」

 

「そうか!確かにおうちの中には、自分が買い揃えたモノが集まっているものね」

 

「そうなの!自分は何気なく買っているものでも、なぜそれに惹かれるの?どうして興味があるの?と一度自分に問いかけてみて!すると新たな自分が見つかったり、自分の能力を磨くためのヒントになるかも!これは自分にとって心地よい空間を作り出すために、とても大切なのよ」

そう話しながら、くみおばあさんは最後の仕上げに照明を飾ります。

 

パチ パチ パチ

 

アダムくんたちが完成したお部屋を見て喜んでいます。

お部屋には暖炉があり、黄色い大きなソファ、温かなブランケットに、ヒュッゲを楽しめるダイニングテーブルが揃っています。

ゆうこさんは、最後に飾った照明を見て、お部屋の雰囲気が一気に変わり驚きました。

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 「ゆうこちゃん。インテリアを作り出す中で、照明はとても重要な役割があるの。空間を華やかにするための照明、大切なものを照らすための照明、焦点を作るための照明、明るさを感じさせるための照明、本を読むための照明など、必要な場所、目的に合わせて計画するのよ」

 

「なるほど!!インテリアって奥が深くて楽しいわね」

 

「スカンジナビアンスタイルを勉強して分かったように、インテリアは暮らしと深く関わっているのよ。だから自分にとって大切なコトやモノは何か?そしてどのような時間を過ごしたいのか?ということを、自分が知ることが必要になるのよ。そしてそれを実現させる力がインテリアにはあるの!じゃあ次はあのドアを開けてみて〜」

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ガチャ! バン!

ドアを開けると、ゆうこさんとふうちゃんはキャンドル屋さんの外にいました。もう一度ドアを開けると、中はキャンドル屋さんでした。

 

「いらっしゃいませ〜」

ゆうこさんはとても不思議な気持ちになりましたが、さっきくみおばあさんに教えてもらったヒュッゲのことを思い出し、キャンドルを買って帰ることにしました。

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今日は照明を消して、キャンドルの明かりでじゅんさんと夕食を楽しむことにしました。

ゆうこさんは、今日起きたくみおばあさんとの出来事を。

じゅんさんは仕事で起きた出来事を、お互いに話し合いました。

キャンドルを灯しながらの食事は、とても穏やかで楽しい時間でした。

 

「ゆうこちゃんいつも美味しい食事と楽しい時間をありがとう」

じゅんさんの言葉に嬉しくて、とても幸せな気持ちになったゆうこさんなのでした。

 

 

おしまい

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